322人が本棚に入れています
本棚に追加
2.思わぬサプライズ
「え!」
年末が近付き、あおちゃんが我が家に遊びに来た日の事だった。
「だから、田中さんは行かないんだって。俺、てっきり蒼ちゃんと過ごすんだと思ってた」
年末年始をどうするのか話題に上がり、僕は例年、田中さんは秋月家で年越しをしていたので、どうせ今年も秋月家で過ごすんだろうと思っていた。
しかし、あおちゃんからの回答は予想外のものだった。
京子さんが秋月家に嫁ぎ初めてのお正月だからと、翔のお父さんが家族旅行を計画していたらしい。
もちろん、その中に田中さんは含まれていた。でも、田中さんから「他に用事があるので」と断られたというのだ。
田中さんの叔母様が経営している旅館は、年末年始が繁忙期なので毎年、田中さんが訪れる事は無いと既にリサーチ済みだった。
だとしたら…一体誰と何処で過ごすんだろう?と不安になる。
その日の夜、田中さんに電話をすると
「あぁ…。はい、その日は御恩のある方に空けておくように言われまして…」
と、申し訳無さそうに言われてしまった。
「え…。じゃあ、初詣には行けないの?」
ぽつりと聞いた僕に
「いえ、初詣までには帰宅しますので」
って、やんわりとそれ以上聞かないように制止させられてしまった。
田中さんと次に会う約束は29日~30日。
もう、翔達に構わなくて良いなら、一緒に大晦日を過ごしたかったな…。
そんな事を考えて夕食を食べていると
「母さん、大晦日に荻野が泊まりに来ても良い?」
と、章三が言い出した。
「はあ?なんで荻野なんかを呼ぶんだよ!」
思わず反論した僕に章三はムッとすると
「荻野は毎年、大晦日と元旦は1人なんだって。だからせめて、うちで一緒に過ごしてあげたいなぁ~って」
そう呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!