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そんな付き合いの中で、清ちゃんの申し出は唐突だった。
「老い先が短いからね。モタモタしている時間がもったいない。どうですか、一緒に暮らしませんか?籍は入れずに、身一つでウチに来てくれたらそれで良い。」
好きだの愛だのより、合理的なプロポーズだ。
「だけど、娘さんご夫婦は?一緒に暮らしてるんでしょう?」
奧さんとは死別していると聞いていたが、娘さん夫婦とお孫さんと同居していると聞いていた。どんな広い家か知らないが、更にそこへ私が同居するのは無理があるだろうと思った。
「アイツはねぇ、金を喰うバケモノですよ。会社の金も家の金も好きに使って寄生するバケモノなんです。実はこれを機に出て行ってもらおうと思ってましてね。結婚しているんだから、夫婦で何とかやっていってもらわないと。」
私が一緒に暮らせば厄介払いが出来るという事らしい。なる程、お金があればあるで、そういう悩みもあるのかと思った。
結婚する気は無かったけれど、“籍は入れない”、“身一つ”というのは魅力的だった。何より清ちゃんとなら、趣味も合うし一緒にいて楽しい。
「少し、お返事を待ってもらっても良いですか?子どもたちに聞いてから…」
返事は保留したが、自分の心は殆ど決まっていた。
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