誰がバケモノか

1/6
前へ
/18ページ
次へ

誰がバケモノか

尚子も、息子の和人も「お母さんが良いなら」と案外アッサリと了解してくれた。 清ちゃんには「同居させて頂きます。宜しくお願いします。」と返事をした。 返事と共に「完全に清ちゃんにお世話になるつもりはないです。自分の食いぶち位は自分で出させて下さい。二人で協力して暮らしましょう。」と伝えた。長年勤めた年金だってあるし、退職金もそっくりそのまま持っている。老後の資金は私にだってあるのだ。 そこからはとんとん拍子に話が進んで行った。 考えてみれば、元の夫とは友だちの紹介で知り合って、すぐに結婚という事になり、“同棲”の経験はない。荷物を整理しながら新しい生活に思いを馳せ、心が浮き立っていた。 住んでいる小さくて古い一軒家は、一応持ち家だったので売りに出そうと見積に来てもらったが、二束三文だった。それでも売りに出すしかないかと思っていたら、娘夫婦が住んでくれる事になった。 「お母さんの部屋はそのまま残しておくから。」 娘にそう言われ、何だか私が嫁に出る娘の気分だった。 「一度、両家の顔合わせをしたいんだけど、どうかな?」 清ちゃんから、顔合わせの会場に料亭の座敷を予約したからと言われた。 「だけど、料亭だなんて、贅沢じゃないかしら?」 「お祝いなんだからこれ位は当然だよ。尚子さんも和人くんも、その家族もみんな連れて来れば良い。披露宴の代わりだよ。」 正式な結婚でもないのに、そうして歓迎してもらえる事が嬉しかった。 尚子と和人にも連絡をして、顔合わせに備えた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加