誰がバケモノか

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「まず第一に、お金の問題です。父からどう聞いていらっしゃるか分かりませんが、この家はまだローンが残っていますし、会社の借金の抵当に入っています。その会社も赤字続きで父の個人的な貯金を切り崩してどうにか続けている状況です。」 初めて聞く話に驚いて、隣の清ちゃんを見ると、ただ俯いているだけだった。 「会社って言っても、父と、父と同年代の従業員が一人だけの工場です。後継者もいないし、この先の発展なんて無い。私は会社は閉めるべきだと言ってるのに、父は続けたいの一点張りで。でも、工場だって貸し工場で毎月家賃が必要なんです。続ければ続けるほどお金がなくなって行くんです。 父は私さえ居なければ会社のお金も家のお金も自由になるって思っているみたいですけど、もうウチにそんなお金は無いんです。 山下さんと一緒に暮らしたいという事は分かりますけど、会社を閉めるなり、もっと節約するなりする必要があると思います。やれ観劇だ、旅行だってしょっちゅう出掛けてますけど、そんな余裕は無いはずです。 この先どうするのかって、父に確認したら、山下さんが退職金があるから助けてあげるっておっしゃったって言うんですけど、それで良いんですか? 山下さんの娘さんや息子さんはお母様が長年勤められた退職金をそんな事に使うなんて、反対なさらないんですか?私が山下さんの娘なら絶対に反対しますけど。」
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