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三分過ぎると司会者の合図で向かい側に座る男性が時計回りに一つ席を移動する。最初はお互いに同じ番号の人からスタートした。
二人目は16番、三人目は15番の人とお見合いだ。三人目にしてもう疲れ果てていた。たったの三分間でお互いの情報交換をして、さらに質問等の会話をするなんて、到底無理だと思った。
「参加は初めてですか?」
三人目の男性は自己紹介もそこそこに、そんな事を言ってきた。ジャケットと細身のパンツを合わせたカジュアルながら隙の無い服装、短くカットされた髪は立つようにセットされていてやけにお洒落な人だ。自分の平凡な格好と比べて少し気後れしてしまう。
「ええ初めてです。20名と全員お見合いだなんて、たったの三分で顔も名前も何も覚えられそうにありません。」
「ああなる程。」
男性はニッコリ笑ってここでの振る舞い方を教えてくれた。
「何も全員の顔や名前を覚える必要はないんです。三分もあれば第一印象位は書けるでしょう。マルバツでも良いし、花丸でも良い、もう一度話したいと思う人だけ印を付ければ良いんです。この後フリータイムですから、番号さえ分かっていれば話に行ける。」
「はあ、そういうものですか…」
考えてみればそうだ。何も全員と知り合う必要はないのだ。お陰で少し肩の力が抜けた。
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