バケモノの棲む家

お見合いパーティー

「初参加なんですけどね、何だか回転寿司のレーンに乗せられている気分ですね、これは。山下さんは何度か参加されているんですか？」

そう人懐っこい笑顔で言う男性は、丸顔に眼鏡の少し小太りの、タヌキみたいな人だった。ポロシャツにジャケットという服装はお洒落度は低いが清潔感がある。

男性の言葉に思わず笑いが漏れた。同じような事を考えている人がいたのだ。

なる程、回転する側から見ればそういう風に感じるのだろう。

「いえ、私も初めてで。ショーケースに陳列されている気分でした。」

私の言葉にその男性も声を上げて笑った。今日初めて、相手の自己紹介カードを真剣に見た気がする。浜野清十郎(はまのせいじゅうろう)さん、７５歳、会社経営とあった。

今まで回転してきて男性の中にも“会社経営”と言う人はいた。何人雇っているだの、年商はどうだの、どうやら自慢話のようだったが、私にはそれがどれだけ凄いのか良く分からなかった。

会社経営者に限らず、男性たちは皆、過去の役職だったり、乗っている車だったり、持ち物だったり、自己紹介というよりは何か自慢話を交えてきた。