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01. 奇跡の少女、N-10「イオ」
その昔、少年はある誓いを立てた。
世界をそっくり変えるロボットを作る、なんていう、百年もかかりそうな夢物語だ。
やがて少年は、誓い通りに、誰もが認める、名のある科学者の一人として、成長した。
しかし、あまりに長い年月は、少年に誓いの意味を忘れさせた。
何のために、ロボットを作っているのか。
何を目指していたのか。
もっとも、彼は間も無く誓いを思い出す。
そして”N-110(ナイト)”という、最新鋭の人工知能搭載アンドロイドを作ることとなる。
だったら、最初からN-110の話をしろ、と思うかもしれない、
誰だって新しいもの好きで、過去の歴史になど興味を持たない。
しかし、N-110というアンドロイドが生まれるまでには、N-01からN-109までの、たくさんのアンドロイドの屍が積み上がっている。
彼らの話をしないということは、彼らを二度目の死に追いやることに等しい。
「機械が「死」など、馬鹿げた話だ」?
果たしてそうだろうか。
「心」「魂」と呼ばれる、自立した自我が存在する機械。
彼らに「死」がないと、どうして言える?
だからこそ、語らなければならない。
初めて自我を生み出した、奇跡のアンドロイドの「死」を、ここに刻みつけるべきなのだ。
アンドロイドの名前は、”N-01(イオ)”。
少女の姿をした、アンドロイドだ。
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