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〈米(まい)踊る釜の中で〉 黒瀬川黒瀬
炊飯器の中の米になりきるのが、昔の日課だった。こういう風に話し始めると、おかしい人間だと思われるかもしれない。はい、その通りです。 どうやら私はおかしいのだ。
さて。米になりきるとはどういうことか。詳しくは覚えていないのだが、ただひたすらじっとして、ゴトゴト蓋が動き始めたらゆらゆら動いていた……ような気がする。私にとって米とは、そういうものであったのだ。動かず、硬く、ザラザラする米が、火とお湯によって甘く、美味しい、ホカホカのご飯に成り変わる。米は本当に素晴らしい食べ物だ。
今でも米は大好きで、胃は弱いが幾らでも食べられる気がする。油を使わないのも良い点だ。朝から胃もたれの心配とか、嫌だし。
釜の中で踊る米になりきる。それは、どこかおかしな私の素晴らしい日課だった。
……などと振り返ってみるのも、時には良いんじゃないか? 特に秒を生きる若人たちには。
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黒瀬川 黒瀬(くろせがわ くろせ)
小説家・国語教師
昔の写真をみると自分でも性別が解らない
米が好き
パンは喉につまる気がするので苦手だが、
ホテルのバイキングではパンも食べる
なんでホテルのバイキングのジャムって
あんなに可愛いんだろう
なんでデビュー作のタイトルは
『純粋な米好き』なんだろう
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