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〈キーボードの反れた語り〉 九条柚妃
ひとくちにキーボード、と言っても、色々な意味があるので、先に言っておく。これから話をするのは、ごく普通のパソコンのキーボードの事です、と。『ごく普通の』を付けたのは、最近、ハイスペックなゲーム用キーボードがあると知ったからだ。勿論、そんな代物が平屋日本家屋にある訳が無い。まず、家族が揃いも揃って機械音痴だから、使える人がいないのだ。それから、白鍵と黒鍵がある方のキーボードも、家で見た記憶は無い。無かったのだから当たり前だ。それに、私が未だ可愛い可愛いと言われていた頃に、お宅にキーボードがあるなんて、夢のまた夢である。クラスに一人だけ、キーボードを持っている人はいたが、なぜか年中パーティードレスを着たがる馬鹿なお嬢さんであった。足し引きしかできないような幼子でも、あんな人間にはなりたくないと思ったものだ。
話が大分逸れてしまった。いつもそうだ。奥へ奥へと進む度にずれていってしまう。まあいい。もう話題を戻す気はない。話の続きは、またご縁がありましたら、とでもしておこう。
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九条 柚妃(くじょう ゆずき)
小説家・エッセイスト
天涯孤独を貫いて、晩年に孤独な人を書きたいと思っていた中学時代からの交際相手にプロポーズされ、結婚。現在、三児の母。鈴木華の娘。
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