〈嘘告〉 山女梨杏

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〈嘘告〉 山女梨杏

じゃんけんかゲームで負けた男子が、メモを渡しに来た。照れた様な顔は嫌悪に笑いを加えただけだろう。事情を知った輩だけがニヤついて近付く。受け取ったメモに『好きです』の下手な文字。嘘告一回目。 彼女持ちの後輩がテンプレートから引っ張り出したメッセージを携帯に送ってきた。表情は見えない。きっとニヤついている。近付く取り巻きがいないだけマシか。薄っぺらい誠実さはすぐに剥がれる。嘘告二回目。 ストーカー的に後ろをつける男共が、適当に摘んだ花を手に『付き合ってください』と言ってきた。私の地獄耳は聞いている。誰が言うのかで揉めて、結局三人で言うことにしたのでしょう。嘘告三回目。 彼女持ち問題児の男友達が、軽い口ぶりで『付き合って』と言ってきた。一応の真面目な顔もなく、いつも通りにニヤついている。君の遊びに付き合うだけで赦してくれ。嘘告四回目。 私は真剣で真っ直ぐな告白をされたことがない。 私は出鱈目で糞みたいな告白しかされたことがない。 嘘告をされ、遊ばれ、転がされた私は。 嘘告をされ、人間不信に陥った私は。 君たちにとっては玩具だったのでしょう。 君たちにとってはゴミだったのでしょう。 だから私は、真剣で真っ直ぐな告白をしました。 出鱈目で糞みたいな告白をしたらきっと、私はとんでもない人間になってしまうわ。 君たちみたいに、ね? ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 山女 梨杏(あけび りあ) 小説家・読者モデル 自他共に認める騙されやすい体質で、神経質だが、O型 と間違えられるほど雑なA型。 精神的に弱く、胃薬を忘れただけで吐き気を催す。そのくせひねくれているのでスーパーキッズへの言葉が汚い。そんな自分を直そうと奮闘中。 代表作は『クソニアの鞜』 『具なし汁なし』
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