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〈石を積む〉 鉄夫
玄関を飛び出し、隣家のカンタを誘って、川への近道を走る。民家と民家の間を縫う細い道。飼い犬に吠えられて怯むリョウもついでに誘う。短パンにタンクトップの少年が三人で一列に走っていくのを見ればぴんと来るらしく、大人たちが
「楽しんでおいで」
と言って笑う。河原の坂を駆け降りる。平べったい石を見つけては、水面の上を滑らせる。それに飽きたら水を掛け合う。それに飽きたら川に入って魚を探す。それにも飽きたら、少年たちは石を積んで遊んだ。別に、川に飽きた訳ではない。また前の遊びにも本気で飽きた訳ではない。いわばルーティンとも言うべき順番に従って、変えていたのだ。
石を積むという、一見生産性のない遊びに少年たちは集中した。高さを競い、その瞬間に崩れ去るのを笑った。これは僕の青春だった。
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鉄 夫(くろがね おっと)
小説家・歌人
平安時代に生まれて三十六歌仙と詠みたい
綺麗な石をへそくりと同じ棚に仕舞う
結婚する前は鉄 男(くろがね おとこ)名義
で活動していた
《黒い金属の歌集》でデビュー
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