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〈焼き芋カー〉 コケラ
私も妹も小学校から帰った後、おやつも終わろうかという時間に限って、それはやって来る。聞きなれたおじさんの声。ガタガタと音を立てるトラック。獣の如く爛々と光る、少年少女の目。
「小を半分こだよ」
と言う母が出した小銭を手に、勝手口から駆けていく。のぼりめがけて、駆けていく。ゆっくり進むトラックに追い付くと、それはもうテンション暴上がりで、
「小1つくださーーい!!」
と叫ぶ。すると優しいおじさんは、
「はいよ! 元気が一番!」
とかなんとか言ってくれる。嬉々とした表情で紙袋に入った大好物を受け取り、ありがとうと叫びながら家に向かって駆けていく。
そうしてすぐに着いた家の勝手口から飛び込んで、餌に食いつく獣の如くガッ!と取り出す。半分に割る。両手で持つ。食べる。口いっぱいに広がる甘みが連れてくる、幸せ。
あの頃の私の幸せとはそういうもので、焼き芋カーはそれの象徴だった。
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コケラ(こけら)
現役高校生作家・イラストレーター
文芸部と美術部に所属
ペンネームの由来は好物
少女マンガの描写に弱い
処女作は“まだ酸っぱい梅”
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