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〈約束の小指〉 有珠山里里子
《指切り拳万 嘘ついたら針千本飲ます》
ご存じ、かの有名な指切りの歌。文字の読めない頃から、約束を取り付けたがる姉のせいで覚えてしまった私は、最近まで歌詞の怖さを知らなかった。勿論、怖さを教えたのも姉だ。しかも怖さを知った今も約束のたびに歌うらしい。姉はなんと恐ろしい女なんだ。
さてさて、今日私が話したいのは姉の恐ろしさではなく、約束の小指の可愛さだ。特に小さな子供の小指は可愛い。もちもちで柔らかく、元気に「ゆびきった!」と言っても互いにうまく離れられなかったりする。そうして、きゃははと笑うのだ。いやはや可愛い。
姉と私の場合はどうであったか。細かいことは覚えていないが、毎回約束を破った時の罰が非常に恐ろしくて、何かと「あんたはほんとうのいもうとじゃないでしょ!」とか言われるもんだから、淡々と指切りの歌を歌ってすぐに離れ、笑うこともなかった。
結局、姉の恐ろしさを話してしまった。まあ事実だし仕方ない。姉は恐ろしい人間だ。
約束の小指も含め、色んなことを教えてくれた人間でもあるが。
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有珠山 里里子(うすざん りりこ)
小説家・元漫画家
ASD
その他の精神疾患で入院経験あり
産みの親に生後三ヶ月から放置され、
乳児院・養護施設に入所。
里子に出されるも相性が合わないという
理由で養護施設に帰される。
その後二人目の里親と出会い、
不登校が切欠で児童精神科を受診。
ASDの診断を受けることになった。
代表作に『りりこさんのおうち』がある
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