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〈目眩く坊主捲り〉 花見団子
昔、字の読み書きも出来なかった頃、百人一首の札を使って、別の遊びをしていた。一番好きだったのは、坊主めくり。積み上げた札から一枚取って、坊主なら手札と一緒に返却。凡人なら手札の仲間入り。姫なら返却された札を貰える(他人の物でも)。と、こんなルールだった。地域差はあるだろうが、大部分は同じだと思われる。
この遊びの良いところは、勝負が最後まで解らないところだ。例えば、オセロや将棋、囲碁やなんかは、技量が物を言う。経験があればあるほど、勝つ可能性が高くなる。では、坊主めくりはどうだろう。毎回札の順番が違うので、誰が勝つか解らない。それに、手を抜く事も出来ない。札をめくっていくだけの実に簡単なゲームであるにもかかわらず、奥が深い。
しかし、どんなものにだって、短所はつきもの。坊主めくりのそれは、簡単であるが故のつまらなさである。めくるのが大好きなめくり魔や、カルタに参加出来ない幼児にとっては、良いかもしれない。だが、競技カルタが大好きな人やめくるのが嫌いな人にとっては、とてつもなくつまらない遊びなのだ。勿論私は坊主めくりが好きだった。程度を聞かれると困るが、まあ、突然依頼された文章の題材に選ぶぐらいには。
ああ、なんだか坊主めくりがしたくなってきたよ。今から独りでめくってこよう。
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花見 団子(かみ だんご)
ノンフィクション作家・エッセイスト
最近発達障害の診断を受けた
セルフチェックをすると幾つかの精神疾患に当てはまる可能性を示唆される謎。
ペンネームは、たまたま近くにあった物。
代表作は『真っ黒エリアへいらっしゃい』
『甜茶』
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