2人が本棚に入れています
本棚に追加
眼前に広がる、白
自分の状況を理解するのに五分はかかっただろうか?
鉄パイプの仰々しい装置の付いた何かの上に寝かされて
すすり泣く声は母と、父と、姉のものだろう
腕が動かない
色んな管に繋がれて、物理的に動かせないのだ
ーーー残念ですが
低い声が聞こえたかと思うと、それは俺がよくお世話になってる外科医のものではないか
母と、父と、姉の泣き声が一層大きくなった
ちょっと待て待て
これでは俺が
ーーー午後10時32分に
死んだみたいじゃねーか!
そうだ、この視界の白は死んだ人にかけられるあれだ
布だ
冗談よしてくれ、俺はまだ生きてるぞ!?
俺は全身の力を最大限に込めて起き上がった
「ふざけんな!俺まだ意識あるし!」
瞳孔が開ききっているはずなのに動く俺を、家族も、主治医も、看護師もゾンビを見るような目で見ていた
俺は死にながら生きていると天界の妖精が告げに来たたのは、後日のことだった
最初のコメントを投稿しよう!