#01[扉の向こう]

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それは、あっという間だった。 会ったこともない、 黒いスーツを着た男性の人の合図で、妻の棺は焼かれた。 もう一度、彼女に妻に会いたい。 空高く上り逝く…葬儀場から立ち上る煙を見上げ、僕は屋上にいた。 「そこにいるのか?」 手すりに手をかけた… 空高く手を伸ばし、きっと妻が僕の手をつかんでくれると。 「お父さん??」 僕の背中にシュンの声が聞こえ振り返ると、その場に座って僕を見ていた。 「な、なにしてるの?危ないよ?」 「…ああ。」 「僕をおいて、自分だけ?お母さんに会おうとか思ってないよね?違うよね?」 「シュン…こんな父さんを許してくれるか?ごめんな。」 子どもの目の前で、去る事を選ぶ!? なんて酷い事をしようとしているんだ? …でも、何と言われようとも僕は妻…なおこに会いたかった。
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