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彼女の家に会いに行くのにあの日から半年の時間が必要だった。 まだリハビリ中で車椅子メインだったが少しだけ杖をついて歩けるようになっていた。 あかりは笑っていた。 線香の香りが漂い涙が溢れて嗚咽した。 オレが見た夢のあかりはもっと苦渋に満ちて悲しそうだった。 でもこの額縁の中にいるあかりはオレがよく知る笑顔で溢れていた。 「どうかその笑顔でいてくれないか...その美しい微笑みで...」 オレは手を合わせて祈った... いや...懇願した。 帰り際あかりの両親に慰められた。 オレは何も答えることが出来ず ただただ頷くだけだった。 そしてお母さんから手渡された。 あのマフラー... あの時ひかりが膝に掛けたマフラーだった。 「もうひかりの事は忘れて新しく踏み出して欲しいけど、 このマフラーはあの娘が最初で最後の手編みした物なの。 わたしも何度もアドバイスして編んでほどいて徹夜の日々を過ごしてた。 残酷かもしれないと悩んだけどやはりあなたに渡すべきだと思ったの。 それにあの事故であの娘の体の血液は殆ど無くしてしまったのに、 あの娘の身近にあったこのマフラーには1滴の血痕も付いてなかった。 ねえ...信一さん...やっぱりあなたの手で供養して貰えないでしょうか? きっとあの娘もそれを望んでいると思うの。」 お母さんは眼にいっぱいの涙をためてマフラーを手渡した。 オレはあの時の事を鮮明に覚えていた。 首に巻いていたマフラーをあかりに手渡して、 彼女は折りたたんで太ももの所に掛けた。 そしてあかりはニコリと笑った。 それが最後に見た微笑みだった。 2年目の冬もこのマフラーを使うことを決めていた。 このマフラーの事はあかりの両親しか知らない。 みんなに隠すつもりはないのだが進んで言うつもりもなかった。
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