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ある日お袋が変な事を言った。 「あの白色のマフラーっていつから持ってたの? 手編みよね。 あれって...もしかしたらあかりさんがくれたの?」 「ああ~そうだよ。どうして?」 「やっぱり...そうなのね... 実はね...内緒にしてたんだけど去年の冬... そうねクリスマスの頃だったと思うけど 友達が家の近くにある居酒屋さんで食事会してくれた事があったでしょ。 杖ついてるから近くでって事で。 往復タクシーだったけど心配でならなかったのよ。 だから帰る頃になると気になって何度も窓を覗いてたの。 そしたらあなたが帰って来た。 でもね...変だった... あなたが巻いていたマフラー... 何だか光ってるの。 夜光塗料のマフラーなの? って思ったくらい。 白色が浮かんでる感じ。 そこまではいいとして…… 私が玄関を開けてあなたを見た時... 心臓が止まるかと思った。 だってあの...あかりさん... あなたの後ろにいたの。 はっきり顔は見えなかったけど間違いなかった。 最初は幻覚?って思ったけど... 私..思わず「いらっしゃいって」 言いそうだった。 不思議と恐怖心とか全然なくて懐かしさで胸がいっぱいになって... ああ~今も忘れないで一緒にいてくれてるんだな~って思った。 でもね...それからよくよく考えたら駄目じゃない? あかりさんにとっても、あなたにとっても決して良いとは思えない。 だってあかりさんは彷徨ってるのよ。 あんなに優しかった娘ですもの、あなたから離れられないでいるのよ。 分かるでしょ。あなたが1番......」 「あのさ… 何言ってるのか分かんないけど… 今だから話すけど... オレが昏睡状態の時あかりはよく会いに来てくれてたよ。 それは凄くよく覚えている。 でも最後はオレの手を振り切って消えて行った。 だからもうここにはいないんだ。 ちゃんとあかりは彼女の世界にいるはずだ。」 「あなたって人はほんとにそう思ってる? あかりさんはあなたに生きて欲しかったのよ。 その時はあなたのそばを離れる事があなたを生かす唯一の方法だった。 だからあなたは目覚めた。 紙一重の生死の境を彼女が生の方に向かわせてくれた。 あかりさんはやっぱりあなたからどうしても離れられないでいるのよ。 だから今度は...あなたが手を離してあげる番...」 「よく空耳って言うけどそれって空目って言うんだよ。 見えたような気がするって事さ。 俺もそうだったけどお袋も相当精神的に参ってたんだよ。」 オレは必死にお袋が話した事を打ち消そうとした。 でも心の片隅でいつもあかりに救ってくれた事を感じていたから... ...あかりを思って泣いた。
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