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 二人の再会を邪魔するのは申し訳なくて、その場から離れ、会長と匡矢と一緒にカウンター席に腰を掛けた。カウンターでコーヒーをつくっていた無口なアルバイトの子は、一瞬だけ私に目を向けて、カウンター奥に引っ込んでしまった。  私が来たら、彼を呼ぶことになっているのだろうか。アルバイト君が喋っているところを見たことがないから、覗きに行きたいなと考えていれば、白い箱を持った彼がやってきた。  だけど、彼はすぐに足を止めた。そして何故か、会長まで動きを止めた。  しばらくして先に口を開いたのは、不敵な笑みを浮かべた彼だった。 「久しぶり、まさか咲彩ちゃんの知り合いだとは思わなかったよ」  初めて名前を呼ばれた。何だかむず痒いけれど、嬉しくて仕方ない。顔がにやけそうになって頬をつねる。 「ぼくも、まさかさぁちゃんの相手が君だなんて思わなかった」  彼も会長も笑っているはずなのに、睨み合っているようにしか見えない。匡矢はマイペースに、どこか現実逃避するように、いつの間にか戻ってきたアルバイト君にブラックコーヒーを注文して、テーブルに突っ伏した。終わったら教えて、と言っているみたいだ。  どうやって終わらせればいいんだろう。お母さんと凛冴さんみたいな感動の再会ではないようだし、むしろ険悪な仲だったはずで、私なんかが間に入ってどうこうできるとは思えない。頭の良い匡矢だったら、どうにか出来ると思うんだけれど。 「あのー」  何一ついい案が浮かばずに小さく手を上げながら声を掛ければ、二人は急に楽しそうに笑い出した。  そういえば、三年くらい前に、とても気の合う友達が出来たと会長が喜んでいた。それも、悪戯の才能が自分と同じくらいあるとかどうとかも言っていた気がする。今まで彼が悪戯をすることはなかったし、その人である確率は低いけれど、二人の笑顔を見ていると、そうとしか思えないから不思議で仕方ない。 「会長、もしかして」 「うん。ずっと前に言っていた気の合う友達だよ」  偶然にしては出来過ぎているような気もするけれど、とにかく二人が友達で良かった。敵対する不良グループのリーダー同士だったら、どうやって後始末をしようかと悩んでいた。
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