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あの子と私の恋人関係はメールで始まり、短いメールで終わった。恋人としての付き合いも、ほとんどはメールのやりとりだけだった。でも嫌じゃなかった。むしろ、あの子が送ってくれる『大好き』という言葉は本当に嬉しかったし、私も似たような言葉を返して、恋人らしいことを楽しんでいた。一緒に帰ることが出来たのは一度だけだったけれど、メールのやりとりだけで私は満足していた。
だけど、だからこそ、付き合っていたという感覚が薄いし、別れたという実感がない。『友達に戻ろう』と提案された私が振られたことになるんだろうけど、少女漫画でよく見るような鋭い胸の痛みも感じられない。ただ、友達に戻るだけだと、自分でも気持ち悪いほど冷静でいられる。
それでも、このまま家に帰りたくはない、どこか別の道を通りたいとは思った。この道は、あの子と歩いた事実がまだ残っている。隣にあの子がいなくて寂しい、というわけではないけれど、別れた直後に歩くのは少し気が引ける。
教科書とノートがたくさん詰まった学校指定のリュックを「よいしょ」と気合いを入れて背負いなおす。一歩一歩ゆっくり足を進め、分かれ道を右に曲がった。
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