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 初めましての道に頭を下げるように、小石を蹴りながら歩いていく。地面のコンクリートの色も、目に入る建物の形も、地面と建物の隙間で健気に咲いてる小さな薄桃色の花も、いつもの道で見るものとあまり変わらない。気分転換したかったから、何だか残念だ。  幸せが逃げないようにため息を堪えていると、灰色の地面に雨粒が一つ、二つと、転がり始めた。その粒は、顔を上げた私の頬や目にも可愛げもなくぶつかってくる。  テレビはドラマとバラエティ番組とアニメしか見ない私は、今日の天気の予報なんて知っているわけもなく、傘なんて持ってきていなかった。  そういえばと、あることを思い出した。今朝、家を出てくるときにお母さんが何か言っていた気がする。「雨が降る予報だから傘を持っていきなさい」とかだったかな、なんて呑気に考えているうちに、雨粒は鋭く、大きなものへと変わっていく。
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