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 一週間前、初めて『好きだ』と伝えてくれたあの子から『友達に戻ろう』とメールが届いた。  たった六文字のメール。私は一秒も掛からずに読み終えた。自分の気持ちと向き合ったり、悩んだりすることもなく、ただあの子がそうしたいならという考えだけで『いいよ、そうしよう』とすぐに返事を返した。特別に冷たい返事だとも思わなかった。  折り畳み式の携帯と、冬が近づいた空の下で冷えてしまった手をポケットに突っ込み、何となく息を吐いて透明な空気を白く染める。一瞬で消えた白い霧のその先、見慣れた通学路の景色を眺め、失恋したのだろうか、と他人事のように不思議に思った。
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