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冷静に考えると自分でもバカだと思うけど、それにしてもバカにし過ぎじゃないだろうか。
そもそも何の用だったんだし。
もう、イケメン意味わからん。
「…こぼしてる」
聡明な二つの瞳が眼鏡の奥からじっと見つめてくる。
璃乙くんとキッチンテーブルで二人ぼっち。
トースト、ハムエッグ、サラダ、フルーツヨーグルト、トマトスープ、…
和泉さんが用意してくれた朝食を頂いていたのですが。
ヨーグルト、スーツにこぼしたっ
これ、シミになるかな!?
慌ててつまんで水道をお借りする。
シミにならないことを祈りながらテーブルに戻ると、璃乙くんが優雅に食べていた。
しぐさ、きれいだな。
そういうの、やっぱり和泉さんに似ている気がする。
もはや自分の唯一の特技である早食いを呪いたくなってくる。
「麻雪さん、大丈夫かな。心配だね?」
いたたまれなくなって、薄っぺらい笑顔を貼りつけながら璃乙くんに話しかけてみると、
「生理痛。いつものことだから心配いらない」
冷静なお返事が返ってきた。
麻雪さんが体調不良で起き上がれないということで、和泉さんがお世話に行っているんだけど、…そうか、生理痛。
「すごい、しっかりしてるね、璃乙くん」
何て言っていいかわからず、とりあえず誉めてみると、
「おサルはもっとしっかりした方がいいよ」
冷めた瞳で返された。
う。その通りだけど。その通りだけども。
小学生にまで言われるのか、私。
やさぐれた気分でトマトスープをすすると、これがまた美味しくて何だか切ない。
いいなぁ、麻雪さん。
和泉さんが旦那さんで出来の良さそうな子どもがいて。
朝ごはん一緒に食べたり、あんな風に優しいキスしてもらったり、…
「でも彼はそんなおサルが好きみたい」
は?
璃乙くんの発言が唐突過ぎてビビる。
まさか和泉さんのキスを反芻してたこと、バレてないよね?
「バイク。気をつけてね。…ごちそうさま」
璃乙くんはさっさと食べ終わり、食器をシンクに運ぶと洗い始めた。
いや、しっかりしてるわ。
そんで早食いでも負けたわ。
…ていうか、不思議な子だなぁ。
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