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麻雪さんが今日は仕事をお休みするというので、和泉さんと二人で出社することになった。
風薫る五月。青々とした新緑。
晴れ渡る空。清々しい朝の街。
同じベッドで寝て、同じ朝ご飯を食べて、同じ家から一緒に出勤。
なんかこれ、新婚さんみたいじゃないですか―――?
麻雪さんには申し訳ないけど、本当に申し訳ないけど。
ちょっと浮かれ気分で歩いていたら、足の長さが違い過ぎて、和泉さんに置いて行かれてしまった。
急いで追いかける私を待ちながら、和泉さんが優しい笑みを浮かべて、
「…つなぐ?」
目の前にその大きな手を差し出した。
「え、…」
これは。アウトですか、セーフですか。
悪魔の誘惑ですか―――!?
「のいは歩くの遅いからな。迷子になりそうだ」
私が動揺に動揺を重ねている間に、和泉さんがさっさと私の手を取る。
「…璃乙と一緒だ」
血圧が急ピッチで跳ね上がり、一気に下降した。
あ、…そういうこと。
そうか、ベッドに入れてくれたのも、璃乙くんと一緒の扱いってことか。
それならわかる、と妙に納得してへこんだ。
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