blue.6

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「ちょっとあんた、研究室から干されたんじゃないでしょうね!?」 広報課に戻ると、早速橙子さんから睨まれた。 「違いますよー。今日は和泉さんが早退しちゃったんです」 まあ、相変わらず研究室では何の役にも立っていないけど。 和泉さんが何か言ってくれたのか、本日の風当たりはあまり強くなかった。 「そうか。それなら良かった」 橙子さんがあからさまにほっとしたような表情を見せた。 …出来の悪い部下でごめんなさい。 「あんたのまとめた資料、よくできてたよ」 こっちを見ないまま、橙子さんがぼそっとつぶやいた。 不意打ちで誉められて、弱った涙腺が刺激されてしまう。 「橙子さ―――んっ」 抱き付こうとしたら、橙子さんがちょうど椅子を引いて立ち上がり、行き場を失くした私は勢い余ってその隣の木下さんに受け止めてもらった。 「…すみません」 「手つなぎ出勤なんて、浮かれてるからじゃないですか」 なんか、ひんやりした空気が流れた。 「…すみません」 まあ確かに、浮かれていたのは事実。だけども。 「和泉碧は、高梨麻雪しか選べませんよ」 木下さんが表情を変えないまま冷たい口調でつぶやいた。 「え、…?」 「さっさとどいてください。のんきな社員さんと違って、こっちは残業できないんですから」 問い返しても、冷たい口調で畳みかけられただけだった。 「…すみません」 すごすごと自席に戻ると、 「あんた、あの和泉さんと手つなぎ出勤!? いつの間にそんなことになってんの―――!?」 興奮した橙子さんに首を絞められたけど、ちょっとそれどころじゃなかった。
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