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殺す理由
「っひゃははははははは!!」
楽しい
楽しい
死ね
僕のために死ね
切れる皮
溢れる血
裂ける肉
刃先に当たる骨
全部、全部僕の手で
嗚呼楽しい
最高の気分だ
これだからやめられない
殺す理由なんて
「楽しいからに決まってるだろ?」
「…とか言ってるけどさぁ、俺からしたら?サイコパス気取りの馬鹿にしか見えないわけよ」
……どうして僕が。
僕の目の前で仰向けに寝転がっているこの男は誰だ。
取り敢えず僕の殺人を知っているらしい。
どうしよう。
口止めしなきゃ。
殺さなきゃ。
縛っている縄をどうにかしなきゃ。
どうすれば…
「言っとくけどぉ。
殺してるの知られて警察に捕まることに怯えちゃってる時点でぇ、君は普通の人だからね?」
どきりとした。
図星なのだろうか。
いや、違う。
僕は楽しくて殺してるんだ。
警察なんて関係無い。
こんな奴に何がわかる。
僕の手にかかればこいつだってぐちゃぐちゃの肉塊だ。
絶対殺してやる。
「というかぁ、何で『楽しい』の?」
「………は?」
「別に殺したやつ使ってシコるわけでもないじゃん?食うわけでもないじゃん?何がしたいわけ?そんなんで楽しめるのぉ?」
何言ってんだ。
僕を馬鹿にしてきた奴が僕の手で無惨に切り刻まれるのが良いんじゃないか。
何年も生きていてこれからも生きる筈の奴が僕によって理不尽に生を断たれるのが良いんじゃないか。
「頭がおかしい」と笑ってきたやつのために本当にイカれてやったんだ。
「ほら、な?結局はただの復讐の延長戦じゃね?
そんなつまんねー理由しか出ないなら君はただの『殺人の犯人』なわけよぉ」
ふざけんな。
見上げて見下すこいつを今すぐにでも殺してやりたい。
僕を馬鹿にするやつは殺す。
殺す!
「おー、怖。なら俺のこと殺しちゃう?殺してみちゃう?」
楽しそうに笑う男が起き上がる。
僕の前にナイフを差し出す。
縄が解かれる。
手が自由になった直後にナイフを手に取る。
男に向き直る。
と、同時にナイフを持っていた手に別の刃物が深く突き刺さる。
男の手にはサバイバルナイフ。
激痛で握っていたナイフを落とす。
「わかってると思うけどぉ、刺される覚悟の無い奴に刺す資格は無いからなー?」
どこかで聞いたことのあるような言葉。
それが意外にも身に沁みる。
「んー…、やっぱこういうの楽しくはねぇなー。勃たねぇし美味そうでもねぇし」
は???
だったら
だったらどうして
「んー?何となく?」
期待とは違う、拍子抜けのする返答だ。
しかし
その言葉を聞いた途端、謎の恐怖心と絶望感が全身を覆った。
怖い
死ぬ
死にたくない
死にたくない!
「わかんねーからさぁ、一緒に作ってくんねー?理由」
男は、友人に頼むかのような顔と口調でナイフを僕の首にあてがい________________
「今回もありがとうございました。報酬はいつも通り振り込んでおきますね」
淡々としてどこか機械じみたいつもの女の声。
「おー」と素っ気ない返答をする。
毎度毎度疲れる。
どっと体力を持っていかれるからやりたくねぇって言ったってのに。
俺の性に合ってないことやらせんじゃねぇよ。
「後は我々がやりますので、着替えてお帰りください」
また素っ気ない返事をしてその場から離れる。
身体が重い。
足がふらついてる気がする。
窓辺に腰掛ける。
煙草に火を着け肺を煙で満たし、細く長く吐き出す。
……『サイコパス気取りの馬鹿』か。
それなら
「俺が一番馬鹿だっつーの」
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