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学校の帰り道。
濃ゆいオレンジに染まった夕空に照らされて、辺りもみんな真っ赤っか。
七海しずく
「アンニュイになるなぁ」
僕は、七海しずく。高校生になったばかりの15歳である。
特徴は、プリティな御尊顔と灰色の髪かな。
なんで髪の毛が灰色なのかは、よくわからないけど……調べたところ、銀髪はあっても灰髪って無いらしい。レアリティの高い、貴重な存在だ。
さて、家への帰路に着いている中で、僕は思慮に耽っていた。
どうとも、僕が生まれる頃にこの世界は『オカルト』が世間に公になり始めたらしい。
霊とか、神とか、妖怪とか。
今ではオカルトと共生するための法律が出来て、道端でオカルトな存在と会うことも稀でない……いや、しょっちゅうあると言っていい。
ついさっきも、頭がワニみたいな人がランニングしていたし、身体の透けた人が河川敷で寝転がっていた。
そういう時代に生まれたとて、ちょっと不思議には思うのだ。
彼らは一体?
思考を巡らせつつ、雲がたなびく赤い空を仰る。
今日もいい天気。
ふと僕は、何の気なく車道に目を落とした。
そこには、トラ模様の猫がいた。
車道のど真ん中でふんぞり返り、我が物かのようにリラックスしていた。
しずく
「……もし。もしもし、猫ちゃん。死相が。君、死相が見えるよ」
僕の優しい呼びかけにも関わらず、その猫は自らの手を舐めて毛づくろいし始めた。
歩道からの要請も甲斐無く、やがて遠くから大きな車両が突っ込んできた。
マズい、このままでは猫ちゃんが轢かれてしまう。
でもなぁ。ここで助けに行ったら僕が轢かれちゃうではないか。
自分の命は大事だよ。僕はトラックに轢かれて異世界転生とか、そういうのは望まないかな。
すると、身体が勝手に猫の方向に引きずられた!
な、なんぞ!?
猫は僕を見つめている。
じっと、ずっと、まるで品定めをするように。
僕の両腕が乱暴に前に突き伸ばされる。
僕は、駆け出した勢いのまま、猫を強く押した。
────猫は、まるで氷のように冷たかった。
この猫……い、一体!?
視界がスローモーションに白く染まっていく。
死ぬ、のだろうか。
唐突すぎる。
あんまりだ、こんなの。
頭の中に、色んな感情が溢れていく。
溢れた感情は涙になって、頬を伝っていく。
「君もまた、選ばれたのさ」
声が、聞こえる。
猫が、喋っている。
猫
「幸運を。正しく使ってね」
────そこからは、記憶がない。おそらく……轢かれた……?
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