-1-「命定め」

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学校の帰り道。 濃ゆいオレンジに染まった夕空に照らされて、辺りもみんな真っ赤っか。 七海しずく 「アンニュイになるなぁ」 僕は、七海しずく。高校生になったばかりの15歳である。 特徴は、プリティな御尊顔と灰色の髪かな。 なんで髪の毛が灰色なのかは、よくわからないけど……調べたところ、銀髪はあっても灰髪って無いらしい。レアリティの高い、貴重な存在だ。 さて、家への帰路に着いている中で、僕は思慮に耽っていた。 どうとも、僕が生まれる頃にこの世界は『オカルト』が世間に公になり始めたらしい。 霊とか、神とか、妖怪とか。 今ではオカルトと共生するための法律が出来て、道端でオカルトな存在と会うことも稀でない……いや、しょっちゅうあると言っていい。 ついさっきも、頭がワニみたいな人がランニングしていたし、身体の透けた人が河川敷で寝転がっていた。 そういう時代に生まれたとて、ちょっと不思議には思うのだ。 彼らは一体? 思考を巡らせつつ、雲がたなびく赤い空を仰る。 今日もいい天気。 ふと僕は、何の気なく車道に目を落とした。 そこには、トラ模様の猫がいた。 車道のど真ん中でふんぞり返り、我が物かのようにリラックスしていた。 しずく 「……もし。もしもし、猫ちゃん。死相が。君、死相が見えるよ」 僕の優しい呼びかけにも関わらず、その猫は自らの手を舐めて毛づくろいし始めた。 歩道からの要請も甲斐無く、やがて遠くから大きな車両が突っ込んできた。 マズい、このままでは猫ちゃんが轢かれてしまう。 でもなぁ。ここで助けに行ったら僕が轢かれちゃうではないか。 自分の命は大事だよ。僕はトラックに轢かれて異世界転生とか、そういうのは望まないかな。 すると、身体が勝手に猫の方向に引きずられた! な、なんぞ!? 猫は僕を見つめている。 じっと、ずっと、まるで品定めをするように。 僕の両腕が乱暴に前に突き伸ばされる。 僕は、駆け出した勢いのまま、猫を強く押した。 ────猫は、まるで氷のように冷たかった。 この猫……い、一体!? 視界がスローモーションに白く染まっていく。 死ぬ、のだろうか。 唐突すぎる。 あんまりだ、こんなの。 頭の中に、色んな感情が溢れていく。 溢れた感情は涙になって、頬を伝っていく。 「君もまた、選ばれたのさ」 声が、聞こえる。 猫が、喋っている。 猫 「幸運を。正しく使ってね」 ────そこからは、記憶がない。おそらく……轢かれた……?
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