-1-「命定め」

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────まぶた越しに、光を感じる。 身体が重い……。それに痛い……。 でも、痛いということは……一命を取り留めた、のだろうか。 ぼやけて聞こえる音の中には、大人の声。女性と、男性……かな。 女性 「……する?この子はQ-325と……というこ…は……」 男性 「……ってる。……収容…終了す……」 女性 「待っ……まだ子どもで……せめて能力を……」 凄く、凄く物騒な話をしている気がする。 今ここで瞼を開けないと、僕はもしかしたら酷い目に合うかもしれないって思う。 必死になって瞼を開けようとする。金縛りになったみたいに全然動こうとしないけど、それでも。 まるで錆びた鉄の扉をこじ開けるように、ゆっくりと、ゆっくりと瞼が開かれた。 そこには、少し驚いた様子の艶やかな女性と、気の毒そうに見つめるちょっと長髪のダンディな男性がいた。 女性 「目を覚ましたのね、よかった! 自分の名前は分かる?」 七海しずく。 そう言おうとしたけど、上手く喋れない。出てくるのは、掠れた声だけであった。 しずく 「な……なな、み」 女性 「あぁ、よかったわ あなた、轢かれる前に猫を見たわね?その猫はどこ?」 男性 「おーいおいおい、待て。目ぇ覚ましたばっかの人間に質問責めすんなよ」 男性は女性を制止する。 そして、男性は僕の寝ているベッドに腰掛け、一つため息をした。 男性 「……はぁ。気の毒になぁ、少年。クソ猫と遭ったばかりに。 俺はグレア。こっちの女はレイスだ。お前の身柄を保護してる」 ほ、保護? グレア 「んまぁ、なんだ。お前がさっき出会ったクソ猫はバケモンなんだよ。言っても分からんと思うが……『自分が選んだ人間に、自分を助けさせてトラックに轢かせる。その代わりに特殊な能力を与える』ってな」 ……なるほど。 そういうオカルトもいるんだ。 僕はすんなりとその存在を認めた。 今のご時世だから。 グレア 「……ほう。そんなに違和感なく受け入れられたか?さすが、最近の若者だな じゃあ、お前が今どういう状況かも察せるかもな。お前はまさに、変な能力を手に入れちまったはずなんだわ。そいつがなんなのかはまだ分からんが」 「それでだな」と、グレア氏は腕を組み、少し沈黙する。 やがて頭を掻きはじめ、また大きなため息を吐いてから、僕に向き直った。 グレア 「まぁ、俺らはそういうのを捕まえて研究し、アーカイブする組織のモンなんだわ だから、なぁ。俺はお前を連行するか、抵抗するなら介錯してやらにゃならんのよ。そこんとこ、分かってくれるかね」 ……やたら、僕の頭は冴えていた。 そんなもんなのかなって。 となれば、答えはシンプルだった。 まだ死にたくない。だって15歳だよ?やりたいことまだたくさんあるから。 逃げることも、出来なそうだし。家に帰りたいのが正直なところだけど……現実的じゃない。 なので……。 しずく 「……連れて、いって、ください」 グレア氏は、「英断だ」と不器用に微笑んだ。 レイス氏は、終始哀しそうな顔をしていた。
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