革のカバー

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・・・後部シートで眠る彼の恋。 わき目もふらぬ直進の恋だった。 可愛い女はときには残忍、 欠片もその気がないのなら 気紛れの誕生日プレゼントなんて やっては欲しくないもんさ。  革のブックカバーに詩集 これを毎日鞄にいれて 通学の、通勤の傍らに。 中味を替えることはなかった。  「私の大好きな詩集なの」 だから、一冊を暗唱できるほど 彼は毎日毎日、そればかり・・・。 いつの日か、その中の一節で ロマンティックな告白を 一生懸命・・・描きながら・・・。 それでも  「秋に結婚するの。   披露宴にはみんなと   いっしょに来てね」 笑顔の招待状で、THE END。
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