革のカバー

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「ヤバイ!寝ちゃってたかあ  運転手さん、申し訳ない」 「いえ、私も少し休憩しました」 「エエと、料金は・・・・」 ワンメーターの表示が。 「あれ?五反田まではもっと」 窓を開けると綺麗な夜明け。 人も疎らな銀座一丁目。 「ああ・・・行き先すら  ちゃんと言ってなかったかあ。  ほんとに申し訳ない」 慌てて車から降りて 「とにかくコーヒーでも飲んで  顔をしゃんとして帰るよ。  ありがとう、なんだか  よく、眠っちゃいました」 男はビルの早朝カフェへ。 カウベルが鳴ると 素敵なお嬢さんが 「いらっしゃいませ」 そう言って熱いオシボリを 手渡してくれるよ。 スッキリ顔を拭いたら 違う世界が見えてくる。 お嬢さんは来月には君の恋人。 だからもう要らないんだ、 後部座席の革のブックカバー。 詩集と一緒に ちゃあ~んと棄てておくよ。                     ー 了 ー
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