花の首輪

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「ありがとうございました。  気をつけて降りて下さいね」 「おじさん!ありがとう」 少年はそっと車から降りて 忍び足で玄関に向かった、 ベストに包まれた猫が 目を覚まさないように。 「本当に助かりましたわ。  野良猫まで乗せてくださって。  子供の忘れ物のベストを  取りに戻ったら、主人の  墓の袂で猫でしょ?あの子ったら  『お父さんだ!』なんて  言うものだから、どうしても  連れて帰りたくて」 細い指が綺麗な母親と 優しい男の子を見送って ウインカーを右に・・・。 バックミラーに 花が開いたような家の灯りが。 さあ、目が覚めたかな? 今夜からそこが君の家。 亡くした人を大切に思う 君達だから、きっと 労り合って暮らしてゆける。 後部座席には、君が残した ・・・・花の首輪。 オバアチャンのところへ 返しておくよ。            ー 了 ー  
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