たった一枚の・・・

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 「大阪の伯父の法律事務所、   よければ働いてみたら?   小さな町の小さな難儀を   片付けるだけで、何一つ   大儲けにはならないけど」 優子から薦められた先の住所と オフにしたままの携帯電話を、 気付いたら、半日見ている。 新しい場所で生きる・・・、 生きる・・・・生きる・・・・ なんだか、もう身体が痛い。 到底、前に進めそうもない。 住所のメモを仕舞うと次には 携帯電話を握り締める・・・。 自分の罪が苦しいくせに あの携帯電話に残った たった一枚の彼との写真が 見たくて見たくてしようがない。 でもきっと、見たら、彼に、 会いたくなって・・・・ 会いたくなって・・・ 会いたくなって・・・・・・! 涙が流れて陽が暮れる。 これを毎日毎日・・・・ もう何を考える気力もなかった。 がんじがらめの自分を棄てる以外 途はないような気がして 夕方、外に初めて出て、 山道を、一人、歩いた・・・。   
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