今宵の客

時 計

グッドタイミングでタクシー、

「・・・駅へ、東京駅へ」

さて、東京駅とは言ったものの

何処へ行くって言うんだ・・・

家も無くなってしまったのに。

まあ、いいさ、駅まで寝て、

また駅で考えるとするかな、

段ボールのベッドでも探して。

ハハハ全く滑稽だよ、

さっきのエレベーターみたいな

十年だった・・・。

サーと昇って、サーと降りて

ネットアプリのゲーム会社、

”学生起業家“って

雑誌に載ったこともあったのは

なんだか昨日のような、

千年昔であったような・・・。

チラリと見た腕時計、

これを売ったら暫くは

暮らしてゆけるだろうけれど

これは俺の“勝利の証”、

・・・どうしても手離せない。