今宵の客

時 計

故郷は岡山の田舎町・・・

“うだつ”を梁上にあげた家屋が

軒を連ねる山間の町。

両親は二人して教員、

確か、妹も今年は教員に

なったはず・・・はず・・・

ここ数年は帰省どころか、

電話だってかけちゃいない。

　「いい加減な仕事して」

ふいと漏れた母親の言葉が　　

カチンときてそれきりなんだ・・・。

真面目一徹の両親にとって

ネット企業なんて・・・

得体がしれないもんだったんだ。

得体・・・そうだなあ、

危ないなあと思ったら傾いて

一ヶ月で畳む商売、得体は

しれないなあ、ハハハ

プラチナの時計がくすんで見えた。

もう一人、故郷で

教員をしているのが、アユカ。

同じ高校で、アユカは地元の

大学に進学、初めの一年は

岡山ー東京を、少ないバイト代を

なんとか遣り繰りして、行き来。

二人でディズニーランドへも。

　「お互いに岡山で教員採用に
　　受かったら、結婚して
　　家を建てよう❗」
　「やっぱり“うだつ”も
　　上げちゃうの？、ふふ」

化粧気のないアユカの頬が

抱いたときだけ染まるのが

愛おしかった・・・。