嘘リング

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そんなときだった。 「出向…です…か…?」 「ああ、S市の環境部なんだ。  今行ってくれてる人が  体調崩してね…」 ここから通うには 無理なS市への移動命令。 「一週間、考えてもいいですか?」 一番に考えたのは “男”のこと…。 思いやりに欠ける男と言えど 情を交わしてきた“男”。 そしていつもの連絡がきて いつものラブホテル。  「あのね…」 相談しようとして…        やめた…。 “これ幸い”と言う顔をされたら 立ち直れそうにもないから…。 別れてからいつもBARへ。 いつもの席で 指輪をクルクル回す…。 これを彼がくれたころは 付き合い始めで 食事なんかもして 少しくらいは街歩きもした。 小さな雑貨屋で 買ってくれた銀の指輪。
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