プロローグ2 妖界

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プロローグ2 妖界

 ここは妖界。広大な土地に、たくさんの妖や物の怪が気ままに暮らしています。自由奔放な彼らは、そこここで争っては和解、というのを繰り返しているため、精霊界のような世界を分つ大きな争いは起きていません。強力な鬼の一族が千年以上、彼らの首領として君臨していたことも関係あったのでしょう。鬼の一族は、大きな争いのないなかで、次第に数を増やしていきました。 さて、ここに一人の鬼がいました。名をカイリといいます。鬼の首領にはたくさんの息子があり、彼は数十人いるうちの真んなからへんの一人でした。同じ時期にたくさん生まれているため、一応皇子ですが、名ばかりの称号です。彼ら息子たちも民間妖と同じように自分で稼がなければならないのです。ですがカイリは、強くて聡明な鬼にも関わらず、とても照れ屋なので、なかなか仕事がうまくいきません。他の兄弟たちとの収入差は開くばかり。 ある日、とうとう首領のお父様に呼び出されてしまいました。 「カイリ。お前、やる気あるのか?このままでは、おまえが、ひいては俺が、妖界での鬼族の恥になってしまう。喧嘩も強けりゃ稼ぎも飛び抜ける、それが我ら鬼族の自慢であり、今となっては使命みたいなもんだ。」 「は、十分理解しております……」 「なあカイリ、理解してるってだけじゃ駄目なんだ。実践、実行して、力を示さないと、いつか妖界の屋台骨がぐらついてくる」 信じらんねえくらい昔の、妖界の戦争はそれは悲惨だったんだ。アレを繰り返したくねえんだよ。首領は遠い目で暗い空を仰ぎます。そして、目の前の息子、何番目かは忘れましたが大事な息子に伝えました。 「お前は追放だ。悪い噂がたたねえうちに、早めに手を打たしてもらう。人間界へ行け」 「に、んげん…界ですか」 「ああそうだ、魑魅魍魎跋扈する、噂の人間界だ。そこで商売して、ちったぁもまれてこい。ここで同じ鬼族にヨシヨシされてちゃ、いつまで経っても稼げねえよ」 豪快な作りの顔をくしゃりと歪め、首領のお父様は人差し指を立てます。 「ま、姿かたちはあいつらと変わんねえ。ツノだけちょいと隠してやるから、頑張ってこいよ。お前、パンだかなんか作るの得意だったろ?店でもやってみろや。じゃあな、息子」 それだけ言って、カイリはたいした準備もできないまま、人間界へどどんと送り込まれたのでした。
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