面倒くさい彼

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「可愛い子!お正月に暇でカンナちゃんと一緒だなんて彼氏はいないの?」 「はい」 「そう、モテそうだよね、あっ、私の彼も一緒に初詣に行くの」  美和はそう言うと彼を呼んだ。リビングの戸が開く音が聴こえてスタスタと歩いてくる音がした。 「あれっ、沙織ちゃん」  彼は驚いたような声をあげる。 「2人とも知り合いなの?」  美和は、女の子と彼を交互に見た。 「うん、中学の時の同級生だよ」 「へえ、偶然、ま、あがってよ。すぐに初詣に行かなくてもいいでしょ」 「ゴメンなさい」  いきなり彼が頭を下げる。 「どうしたの?なんで謝るの?」  美和はアタフタした。 「僕のファーストキスの相手なんだ」 「え」  何もハッキリ言わなくても濁していればよかったのに。でも、この性格だから、うやむやにすることが出来ないんだろうな。 「謝らなくてもいいよー。私だって中学の時に好きな子がいたもん」 「でも、みんなで初詣は無理」 「あー」  面倒くさいなあ。やっぱり言っておけばよかった。アンタ面倒くさいんだよって。去年は言えなかったが。 「今年はさ、言いたいことを言うよー」  美和は彼の背中に手を添えた。 今年からは言いたいことを言える仲になりたい。 終わり
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