面倒くさい彼

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「お母さん、今日さ、佑太くんが来るから、お節料理出してあげてよ」 「はい、はい。去年は来なかったのに、今年は来てくれるんですね。縁起のいいもの出してあげなくちゃ」 「えっ、お母さんまで面倒くさくなってんの?」 「うふふ、美和も覚えなさい、伊達巻、栗きんとん、かまぼこ、黒豆、全てが縁起のいい理由があるんですよ」 「へえ、じゃあ、後で検索してみる。どうせ佑太くんは知ってるんだもん。突っ込まれるに決まってる」  美和は「これ、何で食べるか知ってんの?」「何でなますを食べるか知ってる?」彼に訊かれて閉口する自分を想像すると辟易した。 「さあ、日本酒が用意してあるの。お屠蘇を飲みましょう」  お母さんが言う。美和の家はお父さん以外、全員がお酒を飲まないがお屠蘇だけは飲む。美和は高校生なので当然だが、おちょこ一杯で真っ赤になる。  ピンポーン、玄関のインターホンが鳴る。佑太くんかな。美和は急いで迎えに行く。 「明けましておめでとうございます」  深々とお辞儀をされて同じ言葉を返す。そんなに堅苦しくならなくてもいいのに。 「お父さんが待ってるよ」  何故かお父さんと彼は仲良しだ。話もぴたり合うらしい。 「これ、年始の挨拶」 「えっ、なんか持って来てくれたの?」 「つまらないものだけど、お母さんが持たせてくれたんだ」  よくよく手を見ると大きな包みを持っている。お菓子かな。 「気を使わなくていいのに」 「いや、基本だよ」  面倒くさい!高校生がそこまで気を使うかな?それが普通なのかな。こっちも何か持っていかなくちゃいけないのかな?頭がグルグル思考を繰り返して困惑する。
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