面倒くさい彼

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「あがっていいよ」  美和はそれでも笑顔を絶やさずスリッパを出した。 「あっ、挨拶してからにするよ」 「そう?」  挨拶をしてからじゃないとあがらないのか。トホホ。美和は眉を八の字に下げた。 「お母さーん、佑太くんが来たよー」 「ああ、今、行きます。あら、佑太くん、今日はカッコいい服装なんですね」  よくよく見ると、新しい服を着て来ている。白いセーターに黒いズボン。赤いマフラーが眩しい。 「新年ですからね、服を買いました。今日の朝、おろしたんですよ」  美和は「マフラーまで買ったの?」と訊いてみた。 「うん、新年だからね」 「そう、私は去年の服だけどいい?」 「女の子はね、洋服にお金かかるだろうから気にしないで」  まあ、彼にも、いいところも有るのは否めない。だから付き合いを申し込まれて承諾したんだ。最初は大丈夫か、こいつと思ったが、ずるずると1年以上も一緒にいる。でも今日は友達と初詣に行こう。カンナちゃんとも約束済みだ。美和は心に決めて、彼を家にあげた。 「なんか美和ちゃん、顔が赤くない?」 「あっ、お屠蘇飲んだから」 「あー、僕も飲んだよ。だから、自転車に乗らずに歩いて来たんだ」  もしかして酔っ払い運転になるからかな。確か自転車でもアルコールを飲んで運転するといけないって言ってた。じゃあ30分かけて歩いて来たんだ。 「寒かったでしょう」 「うん、でも、空は晴れていて気持ちいいよ」  彼を前に歩かせて美和は背中を押して廊下を歩く。テレビの音が1階に響き渡っていた。
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