面倒くさい彼

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 ジェンガの基本だが、じゃんけんで勝った人から順に木の棒を抜いていく。美和は2番目だ。慎重にゲームを進める。アっと言ってから彼が木で出来たタワーを崩した。 「佑太くんの負けだよー」  美和は可笑しくなった。 「仕方ないな、みんなの言う事をきくよ」  お母さんが楽しそうに「じゃあ、美和の頬にキスしてほしいですねえ」と言う。えっ、家族の前でそれはキツイ。お父さんはお酒をだいぶ飲んでいるので上機嫌だ。 「おっ、それがいいなあ」  楽しそうに相槌を打つ。 「ちょっと待ってよ。キスなんて無理、無理」  美和はブンブンと手を左右に振った。 「恥かしがらないの」 「無理だってば」  お母さんたら何を言うんだ。美和は、そう思ってツンと横を向く。 「ええ、僕も無理です。他のことならやりますよ」  お母さんが残念そうな顔をする。 「今は高校生でもキスくらいするでしょう。2人はそれもしてないんですか?そうだ。じゃあ、佑太くん、ファーストキスの年齢を教えてくださいよ」  彼は目を丸くする。 「えっ、それは美和ちゃんの前では言えないなあ」  どうしてだろう。美和は首を傾げた。高校生になる前に付き合っていた人が居るとは聞いたことがない。でも幼稚園くらいの頃はふざけてキスをする子がいたな。それ系かな。 「言って、言って、言っちゃえ、言っちゃえ」  お父さんがはやし立てる。 「中学生の時に隣のクラスの女子と体育館でキスしました」  え、えええ!美和は驚いた。まさか。
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