面倒くさい彼

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 コンビニに着くとアイスケースの中を見てどれがいいか悩む。パチパチアイスというものがあった。 「佑太くん、パチパチアイスだって。私これにしよう」 「またあ、美和ちゃんは何時も冒険して失敗するだろう。無難なハーゲンダッツとか買った方がいいよ」 「えーだって、これ、口の中でパチパチ弾けるって書いてある」 「ふーん」  彼は気のない返事をする。ま、いいか。これを買おう。美和は籠にアイスを入れた。 「お父さんとお母さんの分は?」 「あー、あの二人、パチパチアイスでいいんじゃない」 「家族でー?」  彼は目を見開いた後に笑った。可笑しなこと言ったかな。 「僕はノンキロカロリーのゼリーにしよう」 「えっ、全然太ってないじゃん」  彼は身長が高くてバスケットボール部に入っているので引き締まった体格をしている。運動をしているからなのか生まれつきなのか不明だが、帰宅部の美和よりは健康的である。 「正月は太るって決まっているんだよ。美和ちゃんも油断したらダメだよ」  ふん、女の子は少しくらいポッチャリしていた方が可愛いんだって。   結局、ポテトチップスもしっかり買って家に向かう。お母さんが「餅は何個食べる?」と訊いてきた。 「2個」 「僕も2個でいいです」  お母さんは「男の子なのにあまり食べないんですね」と言った。 「でしょう、体形のこと気にしてるらしいよ」  お母さんはくすりと笑う。 「思春期だからですねえ。きっと。お父さんなんか見て、アザラシみたい」  お父さんはお酒を飲みながら、お節料理をつまんでゴロゴロしている。でっぷり太ったお腹が服の上からでも窺える。話が聞こえたらしく、美和のいる方を振り返った。 「アザラシは失礼だなあ、ペンギンさんにしてくれよ」 「南極繋がり。でも私アザラシの方が好き」 「そうかあ?」  美和はウンウンと頷く。
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