面倒くさい彼

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 気が付くと窓の外に白いものが舞って雪が降ってきたようだった。天気予報では雪と言ってなかったので降り積もるほどではないんだろう。 「あっ、雪」 「ほんとだ、初詣大丈夫かな」  お父さんが心配する。スマートフォンでこの地方の天気を見てみると天気予報が変わって雪となっていた。美和は外に出て空を見上げる。ハラハラと白い華が舞い落ちて来る。 「綺麗だねー」  彼も横に立って空を見上げる。 「電車で初詣に行こうと思ってたんだけど危ないよね」 「うん、カンナちゃんの家はここから歩いてすぐでしょう。近所の神社に行こうよ」  彼は空を見上げたまま言う。頬に落ちた雪が液体になって首筋を流れる。美和は男性の色気を感じて途端に恥ずかしくなる。 「さあ、お腹空いちゃったな。家に戻ろう」  誤魔化すかのように言った。  お雑煮を食べてパチパチアイスを食べると、口の中で小さなキャンディーの粒みたいなものがパチパチと弾けた。 「これ、面白ーい」  お父さんの口の中もパチパチと鳴る。 「アハハ、面白いなあ。佑太くんは買わなかったのかい?」 「僕はゼリーを買いました。ノンキロカロリーのものなんですよ」 「全然、太ってないのになあ」 「摂生は若い頃から習慣づけたほうがいいと聞きました」  面倒くさいなあ。やっぱり去年のうちに言っておけばよかった。ウザいところがあるよって。だけど言えなかった。  雪が降って来たので予めカンナちゃんには家に来てほしいとメールを打っておいた。2時になってカンナちゃんが友達と家にやって来た。美和はにこやかに出迎える。 「友達も誘っちゃった。この近所なの。元旦はやることないんだってー」 「いいよー。みんなで行こうよ」  友達という子は色が白くてまつ毛の長い小動物みたいな子だった。こういう子を守りたくなるタイプだって言うんだろうな。家族そろってポッチャリしている我が家のメンツとは違う。南極というより小動物カフェにいるタイプの人種だ。
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