ひきこもり女性

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ひきこもり女性

 山形の新築西通り沿いにあるワンルームマンションの一室。玄関から入ると奥の部屋まで廊下になっている。途中にトイレと風呂が別々にある。部屋にはテレビが窓際にあり、真ん中がテーブル壁にくっつけるようにソファーがある。ソファーの隣に冷蔵庫がある。台所が仕切りを挟んであるが、ほとんど使用しない。床は硬く冷たい、畳がよかったけど仕方ない。テーブルの上には煙草とライターと灰皿と空のコップ。テレビを乗せている台の下にはDVDの機械と音楽の機械とDVDの映画等。ここが私の世界。何をするにも独り。それが好き。  部屋に響く心地好い音楽。私はテーブルに肘をかけ煙草を吸う。窓からは青い空が見える。  「楢葉、外は気持ちいいよ」 頭の中に声が響く。楢葉とは私の名前だ。 誰か知らないけど嫌だ。 テレビ画面に私が映る。外へ連れ出そうとしているもう一人の私。 やめて。私はこの部屋にいる。 「そんなに美しい女性がひきこもりかよ?」 また聴こえてきた。美しい?だからよ。だからひきこもりになったのよ。 煙草を咥えて吸う。 女性の煙草を吸うしぐさはカッコいい。 映画のワンシーンのようだ。 煙が宙へ昇る。 私は私の世界に入る。
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