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誰もいない教室──かと思った晴香はそこにいた人物を見て息を潜めた。教室にはコハルがただ一人で机にいた。
「ゆ………め、あの………」
コハルの声だ。けれどか細くて晴香には聞き取れない。しかし一瞬だけ市松人形の口元が動いた気がした。
会話している。コハルと市松人形が──
何かとんでもないものを見た気がして晴香の背筋が粟立つ。
ぶるりと震えて静かにそこから立ち去った。
翌日、友達に言う。
「コハルちゃんと市松人形が喋ってた」と。
その場にいた友達は面白おかしく聞いていたけれど、瞬く間に伝播した頃には、『恐怖の市松人形』『呪いの市松人形』、そう都市伝説のようになっていた。
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