弐、記憶

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物心ついた時にはコハルはすでにあの市松人形を持っていたと思う。小さい身体にぎゅっと抱き締めていた記憶が残っている。 あれは四つか五つ頃の記憶だろうか。 人形と同じように切り揃えられた髪から覗く白い顔はにこりとも笑わない。腕に抱かれた人形と同じように無表情だった。 俺はコハルとは幼稚園から高校までずっと一緒だった。 その頃からずっと着物だった訳じゃない。ちゃんと指定の制服を校則通りに着ていた。女子なんてものはスカートを短くして履きたいものだろうに、コハルは違った。むしろ、足首が隠れるくらいに長くならないかしら──と思っている節はあったと思う。
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