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気がつくと周りが明るくなっていた。知らない間に眠っていたらしい。
女の人はもういなかった。ただ、頭を触られた感覚が生々しくて、それが夢ではないと信じさせた。
今も敏感なほどに感じるに全てのにおいから、《ガス》は重症でも消えるものなんだと前に教えてもらったことを思い出した。
いつものように電車の音は大きくても耳を塞ぐほど気にならない。人が波のように流れている。もう自分に視線は注がれてないようだ。
毎日のように繰り返す見慣れた光景に安心したのは今日が初めてだった。
***
また《ガス》漏れの臭い。
小走りでその人の後を追う。
《ガス》は自分では気づきにくい。
肩をたたき、言えなかった言葉を言った。
「あの、《ガス》重度───」
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