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あなたは切符を手に駅の改札口を通り抜けた。発着時間が掲示板に浮かび上がる。しかし、あなたはそれに見向きもしない。
ホームには既に一本の列車が停まっていた。慌てないで。あなたが乗り込むまで列車は発車しない。ゆっくりと、落ち着いて乗り込もう。
その列車には誰も乗っていない。
あなたが乗り込み、座席へと腰を落ち着ければやがて扉は閉まり、ゆっくりと列車は動き出す。
がたん、がたん、
ホームの風景が横へ流れ出す。
がたん、がたん、
ホームの空気を置いて、列車が走り始める。
他には誰も乗っていない車内に、若い男性の声が響く。
「御乗車、誠にありがとうございます。この列車は、各駅停車、ホラー経由ファンタジー行き、言の葉号でございます。
どうぞ、ごゆるりとお過ごしくださいませ。
途中下車の際には、切符を扉へお翳しくださいますよう、お願い申し上げます」
ゆっくりと、列車が走り出す。
一冊の本というレールを、一本の列車が走り出した。
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