ハード・ロック・オペレーター

　下町の、とある総合病院の手術室。

　2人の外科医が、ブラシでシャカシャカ手洗いをしている。
「教授、今日は執刀に来てくださって、ありがとうございます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。聞くところによると部長、手術中に倒れたんだって？」
　今日の手術を受ける患者、実はこの病院の外科部長だった。そのため、教授が大学から執刀に招聘されたのだ。助手を務める5年めの若い外科医が答える。
「そうなんすよ！聞きました？手術中にお腹が痛いとか言い出して、あげくに意識なくして倒れちゃうし。まだ縫合し終わってなかったから、僕は手を下ろせないでしょう？」
「そりゃそうだ。で、どうしたの？」
「いやいやいや・・・オペ室からコードブルーかけましたよ」
「ははは、そりゃ前代未聞だな」
「でしょ〜？で、ヘモグロビン6か7くらいしかなくて、内視鏡したら胃癌が見つかったんです」
「九死に一生を得たわけだな」