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速やかに食事を終えた俺は、小走りで建物の外へ出る。
「な、なんだここは……」
目の前に広がる光景。
それはロールプレイングゲームによくある中世ヨーロッパ風な町並みだった。
俺はその場から一歩も動けなかった。
だって、これってそのまんま異世界転生ラノベじゃないか!!
遂に俺もラノベの主人公ってか!
おいおい……、マジかよ。
てか、ここどこだよ……。
「どうしたの? タロ?」
俺を追いかけてきた女の子が、首をかしげながら問いかけてくる。
「なあ、ここってどこ……?」
少女の問いかけに、俺は思っていた事をそのまま声に出した。
「何言ってるの?」
まあ、そりゃあそうなるよな。
これ以上はおかしいと思われてしまうし……。
「あ、ううん。なんでもない」
俺は作り笑いをしながら、どうにかその場を誤魔化そうとした。
「シスター! タロがやっぱりヘンー!」
だが少女は、俺の返事を受けたすぐに、修道院内に響くくらいの大声で美人シスターを呼んでしまった。
「どうかしましたか?」
「タロがなんかヘンなの」
食事の時から様子が変だと思われている上に、今ここでシスターを呼ばれてたら大事になってしまう。
素直に打ち上げても解ってくれそうにないし……。
どうすればいいんだ?
「うーん、体温は何ともなさそうですし、顔色も悪くありませんね……」
俺がどうにかこの状況を回避しようと考えている時だった。
シスターは俺の額と自分の額をそっと合わせると、じっとこちらを見つめながら体調を確かめてきた。
勿論、異性に対して免疫の無い俺は、今まで感じた事の無い感覚で頭の中が支配されてしまい、何も考えられないまま体を震わせる事しか出来ずにいた。
「そうだ、私と一緒に買い物へ行きましょう。そうすれば気も紛れるかもしれませんわ」
「わたちもいくー!」
「ミリアちゃんはみんなと一緒にお留守番です」
「えー……」
こうして俺の意見を聞くまでもなく、連れて行って貰えなかった周囲の子供達の不満そうな表情を尻目にシスターは、俺を連れて買い物をするために町を出て行った。
シスターと俺、二人は町の中にある石畳で舗装された道を歩いていく。
俺はシスターからはぐれないように、彼女の手をぎゅっと強く握ると、彼女もまたそれを拒むことなく優しく握り返してくれる。
もしかして、史上最強のスキルとは、”自分の事を無条件で理解してくれる人が側に居る事”なのか?
そう思いながらも俺は、どうにか今自分が置かれた状況を把握するため、意を決して話しかける。
「あの、シスター」
「はい、なんでしょうか?」
シスターは歩みを止めると、穏やかな笑顔のまま俺の方を向いた。
「お、お願いがあるんだけども、いいかな」
「ふふ、いいですよ」
「ちょっと訳あって昔の記憶がないんだ。だから今この世界がどうなっているか、自分が何者なのか教えて欲しい」
俺はそんな笑顔に胸焦がしながらも、ずっと気になっていた事を問いかけた。
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