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オレのクラスに、ネズミというあだ名で呼ばれているやつがいた。
ネズミは、水木しげるのマンガのキャラに似ていた――といっても、『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくるネズミ男じゃなくて、『悪魔くん』に出てくる情報屋に似ていた。
アイツがネズミと呼ばれていたのは、アイツが根津義治という名前だったのと、チビで痩せていたことも関係していたんだと思う。
ネズミはおとなしいやつで、いつも教室の隅で本を読んでいるようなヤツで、一部の女子には「オタク」とか「キモイ」とか言われていたけれど、本人は全然気にしていないようだった。アイツは恋愛なんてものに興味が無かったんだ。
だけど、アイツ以外の――もちろん、オレも含めた、ほとんどの高校生男子は、ヤリたい年頃……つまり、女子とは【個人的な意味で】仲良くしたい年頃だから、女子からキモがられてるネズミと仲良くするような、そんな変なヤツはいなかった。自分も同じように「キモイ」とか言われたくないからね。
だから、アイツには友達がいなかった。
アイツに話しかけるのは同じクラスのミツオくらい……だけど、ミツオはネズミの友達とか、ネズミと仲良くしたいから話しかけていたわけじゃない。
授業中にパンを買いに行かせたり、金を巻き上げたり、ときには、制服に隠れる場所――教師や親には見つからない場所を殴ったりしていた。
クラスの連中は、ミツオがネズミをいじめていることを知らなかった。気づいていたヤツもいたかもしれないけれど……。
なぜオレが知っているかって?
それは、オレもミツオの「ネズミ狩り」に参加させられていたから。
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